今月のJC:Endothelial markers: thrombomodulin and von Willebrand factor and risk of kidney thrombosis・・・
今月のJCは腎臓移植と以前当研究室で論文発表を行ったトロンボモジュリンに関する論文です。トロンボモジュリンは血管内皮細胞表面に発現しているタンパク質で、プロテインCの活性化などにより抗凝固作用を示します。血管内皮に障害が起こると血管内皮のトロンボモジュリンが切断され、血液中に流れ出るとされています。この論文では再灌流後にドナー腎臓から流出するトロンボモジュリンとフォン・ヴィレブランド因子の計測を行っています。腎臓移植は末期腎不全患者の61人で行われ、採血は腎静脈に一時的に留置したカテーテルから再灌流後1分、10分後に行っています。
腎臓移植後ではドナー腎臓から流失するトロンボモジュリン、フォン・ヴィレブランド因子が増加しており、温虚血状態が長いと増加量が増えるとのことです。また、術後のトロンボモジュリンの増加がその後の血栓症、遠位尿細管の壊死、臓器機能障害と関連があるとのことです。
この論文では腎臓内血管内皮の損傷により流失したトロンボモジュリンの測定はその後の血液凝固に関連する合併症予測のマーカーとして有用ではないかと考察しています。トロンボモジュリンは抗凝固作用を示すことから、流失したトロンボモジュリンを外部から補充すれば合併症の予防につながることが期待されます。当研究室では以前トロンボモジュリン投与が心臓移植モデルで冠動脈の保護作用を示すことを報告しており、腎臓モデルでもトロンボモジュリンを投与することで血液凝固に関連する合併症の予防に関与するのではと期待が持てます。
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