今月のJC:Anti-CD321 ab immunotherapy protects liver against ischemia and reperfusion-induced injury
しばらくJCの更新が出来ておりませんでした。また定期的に掲載していく予定です。
今月のJCは『肝臓の再潅流障害に対する抗CD321抗体の効果』に関して。なんと、筆頭著者は我々の研究室出身の殷先生となっています!順天堂大学アトピーセンターでポスドクになり立派になられていると思います。
さて、臓器の再潅流障害とは、一時的に虚血状態になった組織・臓器に再び血流が再開された際に酸素の供給が酸化ストレスとなって引き起こされる細胞死による障害(症候群)と定義されます。細胞死となれば、免疫反応が必然的に起こる(っている)ので、好中球・マクロファージを始めとする自然免疫やTリンパ球を中心とした獲得免疫も動きだします。
この検討では、マウス肝臓の再潅流障害を作り出し(門脈をクランプし、1時間後に開放)、様々な免疫細胞の浸潤を確認できるモデルを使っています。再潅流後の肝障害を引き起こす上記のような免疫細胞の移動(trans-endothelial migrationといいます)を肝障害のキモと考え、循環白血球の炎症組織への移動に不可欠な因子の1つである『CD321』に対する抗体(90G4)で細胞浸潤を阻害(つまり、肝細胞への炎症細胞浸潤を阻害)できれば、再潅流障害を軽減できるということになります。
結果として、門脈内への抗体投与によって肝酵素上昇抑制やIL-6/TNF-alpha産生抑制、白血球浸潤抑制(特に好中球浸潤抑制)が示された、とのことです。
我々の心移植モデルでも同様のデザインを進行中ですが、解析に関して大変勉強になる研究結果でした。再潅流障害を制御できれば、更に長時間の臓器管理が可能となり、移植外科学の進歩になります。これからもこの分野が発展することを願っています。
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