今週のJC:Intravenous Vitamin C in Adults with Sepsis in the Intensive Care Unit

今週のJCは高用量ビタミンC治療に関するお話(NEJM2022年6月号から)。20年くらい前に鎌倉に行ったとき、あるクリニック?の前にでかでかと垂幕で「高用量ビタミンC点滴やっています!」と書かれたものを見て、なんじゃこりゃと思ったことがあります。

ビタミンC療法に関する研究は数十年に渡ってその内容も多岐にわたりますが、敗血症による組織損傷に対するビタミンCの抗酸化作用を期待した研究ではその効果に未だ賛否両論です。直近ではJAMA 2019; 322: 1261-70には、高用量ビタミンC投与は敗血症及び急性肺損傷の患者の死亡リスクを下げたとあります。しかし、JAMA 2021; 325: 742-50やIntensive Care Med 2022; 48: 16-24に掲載されているように、ステロイドなどの治療を行っている敗血症に対するビタミンC治療の付加効果は無かったとしています。加えて、現在の情勢はこのJAMA2019のランダム化比較試験をもってしても、メタ解析においてその効果を疑問視されています。

そのような背景の中、昇圧剤治療を受けていた敗血症患者への高用量静脈内ビタミンC投与による死亡と臓器機能障害のリスクに関するランダム化プラセボ対照試験が行われました。これまでの先行研究を参考に、Phase III・多施設(カナダ・フランス・ニュージーランドのICU35施設)・ランダム化設定で、872名がランダム化されました。Primary outcomeはビタミンC群44.5% vs. プラセボ群38.5%となり、特に28日目の死亡では、ビタミンC群35.4% vs. プラセボ群31.6%と有意にビタミンC群で高かったとのこと。

以上から、敗血症という(特殊な)状態で、適切な治療に加えて高用量ビタミンC療法が効かない(というより、リスク増)という結果になりました。これでも、まだこの症例、この病態では効果の可能性があると思うのは自由ですが、そのビタミンCの作用機序を考えれば、一時的な活性酸素除去(その他もろもろ)による組織保護がそもそも一時的なのですから、膨大な酸素消費を行う我々の体に発生する活性酸素をビタミンCで対応しようとすれば、それ相応の副作用が待っているのでは?と思う以前からの私でした。

帝京大学医学部 移植免疫・腫瘍免疫研究室

夢と希望をもって誰でも(出身・経歴を問わず)斬新な研究ができるよう、この研究室の俗称を“どらえもんラボ”と名付けました。実験をしたい、そして新しいことを発見したいという夢がありながら、なかなかその場が見つからない、そのような方は是非“どらえもんラボ”にお立ち寄りください。そして、実験や討論を一緒にやりましょう。

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