今週のJC:Antibody-Mediated Rejection of Solid-Organ Allografts

少し時間が空いてしまいましたが、今週のJCは臨床移植学の最大の課題の1つである抗体関連型拒絶反応の紹介を、NEJM2018(N Engl J Med 2018;379:1150-60.)から。

毎年12万人の新規移植症例があるにもかかわらず、現在機能している移植臓器を持つ患者は100万人程度しかいないと言います。その大きな原因の1つがantibody-mediated rejection (AMR)というもの。特に、AMRの中でも慢性AMRは未だ制御困難な病態であり、この病態に陥ると軽快させる治療法がほぼありません(現在、IL-6/IL-6R抗体の臨床研究が試行中)。

AMRの定義は、『移植後いつでも始まり、様々なレベルで継続し、慢性的な同種移植片の損傷、機能不全、および喪失の発症に徐々につながる疾患プロセス』とされています。その診断にはBanff分類というものが用いられ、ドナー特異的抗体の存在や組織生検biopsyを行い、その程度を判断します(最新はBanff Criteria 2017)。最近では、Gene-expression profilingなるものが考えられており、AMR時に共通した分子(a common rejection module: CRM)を測定することで、AMRの診断の助けに使用という研究も進んでいます。そのCRMの多くのデータを見ると、AMRに関与するのはNK細胞・(おそらく血管)内皮細胞・マクロファージとのこと。B細胞やT細胞などではなく、意外な細胞たちが悪さをしているのだそうです。AMRの機序として、補体活性が挙げられますが、補体活性が関与しないAMRも存在しており、治療を更に困難にしています。治療法は、血漿交換・IVIG・ステロイドなどの標準治療の他に、DSA産生を減らすための治療(B細胞除去など)、補体活性抑制、IL-6/IL-6R抗体治療などが挙げられます。それぞれの治療で効果があったという報告は多くありますが、各臓器移植に共通して使用でき、これや!という効果的な治療はまだ開発されていない状態です。

我々のラボでも、古典的な方法ですがマウスモデルを作成し、DSAを測定し、AMR・慢性AMR制御を目指して研究しています。興味のある方は是非連絡してください。

帝京大学医学部 移植免疫・腫瘍免疫研究室

夢と希望をもって誰でも(出身・経歴を問わず)斬新な研究ができるよう、この研究室の俗称を“どらえもんラボ”と名付けました。実験をしたい、そして新しいことを発見したいという夢がありながら、なかなかその場が見つからない、そのような方は是非“どらえもんラボ”にお立ち寄りください。そして、実験や討論を一緒にやりましょう。

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