今週のJC:Kidney transplant: New opportunities and challenges
当研究室では今までマウス心臓移植モデルを用いた実験を行なっておりましたが、最近ではマウス腎臓移植モデルでの実験を試みております。そこで今回のJCは人の腎臓移植の現状に関する論文です。
腎移植の生存率は以前に比べて大幅に改善しています。特に若い人の腎移植では透析治療に比べ15年以上長く生きられる可能性があります。しかしながら、腎移植には多くの課題が残っています。一つ目にはドナー不足が挙げられます。2016年では約10万人の腎移植待機患者がいたものの、実際に手術が行われたのは19000件だったとのこと。また献腎移植では場合によっては手術まで約6年待つ必要があるとのことです。もう一つの腎臓の提供方法である生体腎移植は虚血性損傷が少ないなどにより献腎移植に比べて5年生存率の成績が良いですが(生体腎移植:約80%、献腎移植:約65%)、ドナー腎提供にあたり倫理面を含む多くの問題が生じます。
二つ目には感染症が挙げられます。腎臓移植の際には免疫抑制剤の使用が必須であるため感染症に罹患しやすくなります。腎臓移植時にはEBウイルスやサイトメガロウイルス、水痘帯状疱疹ウイルスなどの抗体があるかレシピエント、ドナーどちらでも検査する必要があります。
三つ目には冠状動脈疾患があります。末期腎疾患の患者は冠状動脈疾患に罹患しやすく、透析を受けている患者は急性心筋梗塞による死亡率が高いとされています。さらに腎臓移植後1年は、透析治療を受けた患者より心筋梗塞を起こす可能性が高いと報告されています。
このように腎臓移植には多くの問題が残っています。これからマウス腎臓移植モデルで実験を始めることで、少しでも改善の手がかりになればと思っております。
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