今週のJC:A trispecific antibody targeting HER2 and T cells inhibits breast cancer growth via CD4 cells

少し遅れましたが、今週のJCです。Natureの3月10日号から。

免疫チェックポイント阻害薬によって誘発される抗腫瘍効果はその中心にT細胞応答があります。CD8T細胞はこの主要なエフェクターとして機能しますが、CD4T細胞の役割はまだ不明点が多いままです。

この研究では、HER2・CD3・CD28に対する三重特異性抗体を用いて(これが凄い!)が、腫瘍細胞サイクル進行のCD4依存性阻害を含むメカニズムを通じて、ヒト化マウスモデルにおける乳がんの退縮を誘導した、とのこと。作用機序としては、CD8細胞が腫瘍崩壊に直接作用したのに対して、CD4細胞は癌細胞周期G1/Sの進行をブロックし、さらに炎症を誘発することで抗腫瘍効果を示した。

なかなか強力な抗体治療です。細胞の表面マーカーが何百も発見され、それぞれの細胞内シグナルが解明されていく中で、腫瘍細胞の特異的な攻撃のために何種類もの抗体がミックスされたモノ(今は2種類が主流)が開発されていくのでしょう。

※腫瘍浸潤T細胞に関するまとめ的なモノも直近のNEJMで特集がありました(N Engl J Med 2022; 386:992-994)。参考になれば。

帝京大学医学部 移植免疫・腫瘍免疫研究室

夢と希望をもって誰でも(出身・経歴を問わず)斬新な研究ができるよう、この研究室の俗称を“どらえもんラボ”と名付けました。実験をしたい、そして新しいことを発見したいという夢がありながら、なかなかその場が見つからない、そのような方は是非“どらえもんラボ”にお立ち寄りください。そして、実験や討論を一緒にやりましょう。

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