今週のJC:Drug-Coated Devices for Peripheral Arterial Disease

今週のJCは昔の閉塞性動脈硬化症(ASO・PAD)に対する臨床研究に関する論文を使って、臨床研究を理解することの難しさをお伝えしたいと思います。

2021年のNEJM1月に報告された、Drug-Coated Devices for Peripheral Arterial Diseaseというミニコラムで、PADで使用される薬剤コーテイングデバイスの長期成績に関する報告です。背景として、パクリタキセルがコーティングされたデバイス(PCD)は内皮過形成を抑制することで、コーティングのないデバイスよりも再血行再建率を低下させると報告されていました。しかし、2018年12月に報告されたメタアナリシスにより、コーティングされていないデバイスで治療された患者と比較して、PCDで治療された大腿膝窩動脈PADの患者の死亡リスクが高いことが明らかになったため、PCDの長期安全性に関する疑問が生じました。しかし、その後の臨床試験(SWEDEPAD)ではその有意差は認められませんでした。

短い報告ですが、ランダマイズ化臨床研究のメタ分析の結果が数年で否定された1例です。ランダマイズ研究のメタ解析は臨床研究において最高位に位置するものですが、決してそれも完全ではないのでしょう。社会的背景、人種、臨床症状の分類など様々な説明因子によって変わることもあるのです。特に、長期的な臨床結果を判断するとき、メタ分析だからといってその結果だけで満足せず、継続して調査し続けることが大切だと感じさせられた報告でした。

帝京大学医学部 移植免疫・腫瘍免疫研究室

夢と希望をもって誰でも(出身・経歴を問わず)斬新な研究ができるよう、この研究室の俗称を“どらえもんラボ”と名付けました。実験をしたい、そして新しいことを発見したいという夢がありながら、なかなかその場が見つからない、そのような方は是非“どらえもんラボ”にお立ち寄りください。そして、実験や討論を一緒にやりましょう。

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