今週のJC:Heterotopic heart-unilateral left lung transplantation in dogs

 今週JCで紹介するのは少し昔の論文になります。現在心臓移植をテーマに研究をしています。そこで犬猫での心臓移植について調べてみました。今回紹介するような移植モデルの作成は多数出てきますが、治療に心臓移植を用いている報告はないようです。弁膜症の手術だけでも難しいのに移植となるとさらに困難であろうと考えてしまいますが、今回の報告では1987年に成功していることを知って驚きました。もっと古い論文もあるようです。

 この論文でのモデルは心臓と左の肺を同時に胸腔内に移植する方法となります。大動脈や肺動脈をend-to-side、期間はend-to-endで縫合していたようで、かなり大変そうに見えますが、約70分くらいの虚血時間で手術手技を実施していたようです。周術期に14症例中4例が死亡となっていましたので、難しい手術であるのは間違いないようです。モデルとしては心臓や肺に起こる変化を捉えるのに有効とされていました。術前のシクロスポリンと術中術後のメチルプレドニゾロンの使用で、生存期間は平均23日±28日と記載がされており、別の手技では平均36時間であったということを考えるとこのモデルは長期の生存であったと言えるかもしれません。初期のモデルに比較して我々の研究室でのマウスモデルの生存日数はとても優れていることを再認識しました。

 今後も臓器移植による治療は倫理的な観点からも獣医療では普及は難しいかもしれません。特に心臓は難しいかもしれませんが、今後も移植免疫学で学ぶことを獣医療にフィードバックできるよう頑張ります。

帝京大学医学部 移植免疫・腫瘍免疫研究室

夢と希望をもって誰でも(出身・経歴を問わず)斬新な研究ができるよう、この研究室の俗称を“どらえもんラボ”と名付けました。実験をしたい、そして新しいことを発見したいという夢がありながら、なかなかその場が見つからない、そのような方は是非“どらえもんラボ”にお立ち寄りください。そして、実験や討論を一緒にやりましょう。

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